■どうして、手にとったか
寅さんを観たくなるのは、人生の節目や「おとなって何だ」って考える時期だと思う。おれの場合、小学校高学年、10代最後、30超えた今。また、好きな俳優のフィルモグラフィーをたどると「男はつらいよ」に当たることも多い。
そんなユーモアや悲哀を感じたくてBSで放送されている「男はつらいよ」を何週分か録画しておいた。最初に観たのが、本作。
■カラッと乾燥した地獄
今作は、「女性が身を預けてくれた時に受けとめきれなかった」経験のある男には、つらい映画だ。
ジメジメはしていないけれど、カラッと乾燥した地獄なのだ。そういう意味で、今作はダウナーだ。
公開時の「このたびの恋は 寅次郎にとって ちょっぴり、きつうございました はい…」というキャッチコピーからして、それは狙いどおり、または「どう編集しても、そうなっちゃった」んだろう。
ある感情や情景と強く結びついて、これからも繰り返し思い出すんだろうな。ひどく酔っ払った時に映画ダンボのピンクの象を思い出すみたいに。
■受けとめる器のない男に頼るのを諦めた
女性の側からは、どう見えるんだろう。きっと「受けとめる器のない男を頼るのを諦めた」に過ぎない。
「『男に全身でぶつかっていかない』からお前は失恋したんだ。幸せになれないんだ」と老人に説教をされ、半信半疑で、次の男にぶつかろうとする。すると、相手は意気地なしで見て見ぬふりでスルリと身をかわす。頼るに値する器の男じゃないんだ。頼りがいのある男なんているのか、と元の生活に帰っていく。
男はふがいなさを見限られ、女はしたたかに生きていく。
男にとっては乾燥した地獄だ。テレビ放送で観たあと、最近「観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ」という特集上映で本作がかかった、と知った。立川志らくさん、高橋洋二さんの解説がついたそうだ。おふたりがどんな絶望を語ったのか、気になる。
男にとっては乾燥した地獄だ。テレビ放送で観たあと、最近「観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ」という特集上映で本作がかかった、と知った。立川志らくさん、高橋洋二さんの解説がついたそうだ。おふたりがどんな絶望を語ったのか、気になる。
個人的には、絶望というよりは諦念を感じた。寅さんにとっても、女性にとっても。寅さんは懲りずにカラ元気で同じことを繰り返すのだ。