■夢のなかの街
こんな夢をみた。と、時々、日記をつける。
起きてからも、ずっと印象に残る夢がある。
おれの夢は、同じ街で起こる。
時間や、登場人物、出来事はバラバラなのだが、
建物や風景の断片がつながることに気づいた。
■街の断片
方角はわからないが、にぎやかな駅を中心に東西に高架が走る。
西側で、電車と高速道路が交わっている。
高速道路の下には、シンガポールを思わせる飲食店、ラーメン、喫茶店などが並ぶ。
高速道路と駅の間には、歓楽街があって、
ゴミゴミとした路地に、雑居ビル、飲み屋、風俗店。
華やかなネオンはなく、陰鬱とした、猥雑さがある。
おれは、夢のなかでこの辺りをウロウロしている。
この間は、駅から路地を通り、歓楽街へ抜けた。
■こどものあそび
こどもが、自分の家のまわりを開拓する感覚だ。
知らない道を歩いていくと、知っている店の横に抜けたり、
友達の家に着いたりする。
こどもの頃は、親に連れられて通った街の断片がつながった。
今は、夢で観た断片がつながっている。
■街での出来事
夢のなかでも「あ、こう つながっているんだ」と喜びがあった。
喜びと、「また、この街にいるのか」という閉塞感。
夢のなかで、この街で起こる出来事は、あまり明るくない。
悪夢というほどではないけれど、後味に苦味が残る。
この間は、アパートの二階から飛び降りるぞ、と わめき散らす老人の演説を聞きながら、コートの襟をたてて、路地を逃げるように走った。
■悪夢の愉しみ
おれは、夢のなかでは、ふだんに増してボーッとしている。
それでもさずがに最近は「この街並はいやな気配がするな」と感じるようになってきた。
そして、いくつか出来事が起こった後「あの街だ」と気づいた時の絶望感。
ま、考えようによっては、悪夢のなかにちょっとした愉しみがあるのだ。
「なるほど、この路地はここにつながるのね」と。