2015-12-02

よいコンサル、わるいコンサル、ふつうのコンサル

今さらながら「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」を読んだ。

■どうして手にとったか


おれは、ITコンサルを生業にしている。
参加しているプロジェクトが、外的要因で暗礁に乗り上げてしまった。
結果としてクライアントの問題解決プロジェクトを完遂できなかった。

責任を問われる状況ではないのだけれど、これまでの自分たちの成果を反省したく、手に取った。


■主旨

イントロにエッセンスがつまっている。
おれの理解はこうだ。

「ビジネスの問題は、ことごとく人間が引き起こしている。
人間は、コンサルティングの理論が前提としている、合理的で単純な論理的存在ではない。
だから、コンサルティングの理論が論理的に正しくとも、必ずしもビジネスには効かない。」

「問題のほとんどはコミュニケーションだから、ちゃんと話そう。
コンサルタントに『考えること』を丸投げせず、自分で考えよう。
そのうえで、うまくコンサルタントを使おう。」


■イチャモンをつけるなら


「コンサルティングの理論が正しくない」証明として、本書では反証が複数示されている。
著者の言うとおり「理論の誤りを証明するためには、反証がひとつ見つかれば十分」だ。

論理的には。

イチャモンをつけるなら、
「もしビジネスや、それを動かす人間が必ずしも論理的ではないなら、その反証は、理論の誤りを証明できない」
のだ。
「コンサルティングが効く場合も、効かない場合もある」という証明にしかならない。


おれは、本書で批判されているコンサルティングの理論が誤っているとは思えなかった。
「こんなケースでは効かなかった」という失敗事例集として読んだ。

じゃあ、読んでいてつまらないかというと、そうではない。
自虐的なあるあるネタとして愉しみ、反省した。


■コンサルタントのよしあしの差は、明文化しづらい


よいコンサルタントは、とにかく結果を出す。
結果とは、クライアントが抱えていた問題の解決だ。

いっぽう、わるいコンサルタントはゴミを作る。
そして、その自覚はない。
なぜなら、問題の解消に至る前にクライアントに契約を切られ、結果さえ見ないからだ。

ふつうのコンサルタントは、ただの「デキる」秘書だ。


出す結果には歴然とした差があるのに、その差を明文化するのは難しい。

ひとつだけ、はっきりとわかるのは、わるいコンサルタントは「嫌なやつ」だ。

  • コミュニケーション能力が低く、自分の身のほどや無知を正しく認識していない(イタい)
  • 偉そうに読みかじった方法論を無根拠に振りまわす(素直なクライアントは迷惑をこうむる)
  • クライアントの陰口をたたく
  • プライベートでは、できるだけ顔を見たくない

 同じコンサルティングの方法論を使っても、よいコンサルタントが使うと問題が解決し、わるいコンサルタントが使うと問題を悪化させる。

「嫌なやつ」は仕事の結果は出せない、という点は、本書の主張と近いのかもしれない。




申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
I'm Sorry I Broke Your Company

カレン・フェラン(Karen Phelan)著
神崎朗子訳
大和書房

本書を読んでいて、同じスタンスの本を思い出した。
世の中で盲目的に「信じられている」心理テストの反証をした書籍。
おもしろかったー!